新しい楽器が欲しい!
チェロを習い始めたころは、先生が所有していた4分の3サイズのチェロをお借りしていました。
何か月かして、チェロの専門の先生をご紹介いただき、その先生がチェロを選んで下さり、
初めてマイチェロを手にしたのでした。それほど高価なものではありませんでしたが、
良い音のする、弾きやすい楽器で、以来10年間ずっとその楽器を使っていました。
最近、同じ先生からチェロを習っていた同僚が
「実は新しい楽器、買っちゃったんですよ~~」と、楽し気に教えてくれました。
彼の嬉しそうな顔を見ているうちに、なんだか自分も新しい楽器が欲しくなりました。
楽器屋さんには心当たりがなかったので、同僚から島村楽器さんを紹介してもらい、
早速連絡を取ってみることに!
楽器のリスト
担当者の方にメールで以下のような要望をお伝えしました。
- 予算
- 試奏したい
- 自分の楽器を持ち込んで比較しながら選びたい
- 楽器だけあるいは弓だけの購入になるかもしれない
すぐにお返事があり、試奏の日程を相談しました。
当日用意してくださる楽器と弓のリストも事前に送ってくださり、期待が高まります!
試奏当日
楽しみすぎて、休日なのに6時前に目が覚めてしまいました。
「気に入ったのがなかったら、無理にお金使わなくていいんだからね!」by 中3の娘
お年玉を持っておもちゃを買いに行く子どものようのことを言われながら出発!
今回は島村楽器ザ・モール仙台長町店で試奏させていただきました。
初めてのことでとても緊張していましたが、担当者の方が笑顔で迎えて下さいました。
誠実そうで、なんでも相談できそうな方でとても安心しました。
試奏室に入ると、中にはチェロがずらっと並んでいました。その数なんと9台。

なんたるぜいたく!
この日用意されていた楽器は以下の通りでした。
- Diego Plaza (イタリア)
- Victor Joseph Charlot (フランス)
- Aubert Lutherie (フランス)
- Satoru Fukawa (日本)
- Bjorn Stroll (ドイツ)
- Balazs Akos (ハンガリー)
- Lother Semmlinger (ドイツ)
- Reiner Leonhardt (ドイツ)
- Max Stromer (ドイツ)
楽器から選ぶ
弓も何本か用意されていましたが、「楽器を絞ってから、弓を変えて弾いてみましょう」と
アドバイスをいただきました。ここからは主な楽器と弾いた感想を書きます。
主観的で勝手な感想なので、ご参考までに。
Diego Plaza (イタリア)
Diego Plazaは弦楽器製作の聖地イタリア、クレモナで若手のホープと言われる製作家だそうです。
とても明るく、明瞭な音だなあと思いました。高音もまろやかでよく響きました。
「あれ?ちょっと上手くなった?」と錯覚する感じでした。
Aubert Lutherie (フランス)
Aubert Lutherieは伝統あるフランスの楽器メーカーだそうです。
弾いてみてすぐに、発音の良さを感じました。
音がポーンと出る感じ、とでもいうのでしょうか。音は空洞を感じるというか、
ふくよかな、品のある音という印象でした。
Satoru Fukawa(日本)
Satoru Fukawa(富川智)は日本の製作家で、
「イタリアの伝統技法に加え、日本の木工加工や漆塗りの技法を取り入れ、独自の作風を確立」
されているとのこと。その富川さんの引退前の最後の作品とのことです。
イタリアのジョバッタ・モラッシーから取り寄せた高級木材を用いて
製作されているそうです。ご自身でチェロ演奏もなさる富川さんがこだわり抜いて
おつくりになった、しかも引退前の集大成的なチェロです。
まず、見た目がダントツで美しい!部屋に入った時に一番最初に目に飛び込んできました。

見た目だけではありません。低音から高音までバランスよく響く音、
音色は柔らかさの中にも芯のある、緊張感のある音だと思いました。
島村楽器さんのHPです。富川さんのチェロが紹介されています。
島村楽器さんではSatoru Fukawaの最後の作品を2台所有されているとのことでした。
おススメです。
Bjorn Stroll (ドイツ)
Bjorn Strollは父であるKlaus Strollの後継者として楽器製作をしているそうです。
この楽器は低音の響きがピカイチでした。体に感じるほどの豊かな響き。
聞けばこの方はチェロとコントラバスの製作をしているマイスターさんとのこと。
低音だけではなく中音域も非常に美しい、ふくよかな響き。
スケールを弾きながら涙が出そうになる美しさでした。
高音も鋭くなく、包み込まれたような優しい響きでした。
この楽器は4番目に弾いたので、まだ5台残っていましたが、
弾きながら「ぜったいこれでしょ!」と思っていました。
外観はアンティーク仕上げで、新しい楽器ですが歴史を感じさせる仕上がりになっています。
楽器の表面にキズをつけてはその上からニスを塗り、という手間をかけてこの感じを
出すのだそうです。かなりのセンスが必要そうですね。


日本では比較的きれいな楽器が好まれるようですが、海外ではアンティーク仕上げ
の楽器の方が人気が高いそうです。背板の木目も美しいですね。
Satoru Fukawaにはかなり未練がありましたが、この楽器に決めました。
Reiner LeonhardtやRother Semmlingerは、自分の楽器に近い感じがしました。
弓を選ぶ
弓も複数あったのですが、印象に残った弓について書きます。
Atelier KAMATA (アトリエカマタ)
神奈川県小田原市の工房だそうです。国際的なコンペで賞をもらうような製作家さんです。
この弓は軽い力でよく響く音が出る、という印象でした。
あえて重みのある弓にすることで、力を入れなくても弓の重みが弦に乗るようになっている
みたいです。今回は購入しなかったのですが、今後購入を考えたい弓でした。
弾きやすかった。
Claude Chabert
私が言うのもおこがましいのですが、とてもコントロールしやすい弓なんだと
思います。動きが軽やかで、出てくる音も強く美しいという印象でした。
さるプロのチェリストの方が学生さんのころに使用していたものだそうです。
実は今回用意されていた弓の中では最も高価なもので、
予算もオーバーしてしまうため、正直かなり悩みました。
でも、「これから長く付き合っていくものだから!」と
思い切って購入を決めました。なんと証明書がついてきました。
正真正銘Claude Chabertの作品ということですね!
弾けばわかる!
今回試奏するにあたり心配なことが一つ。
いろいろな楽器や弓の違いが自分にわかるだろうか?ということ。
格付けチェックという番組がありますが、私が選ぶのはいつも安い方の楽器です笑
そんなおバカなお耳の私が、楽器なんか選べるのか?と思っていましたが…
実際に弾いてみるとわかるものですね。弓を弦に乗せたときの感覚、
自分の腕の動きに合わせて出てくる音を耳と体で感じながら弾いていると、
楽器にも弓にも驚くほど個性があることがわかりました。
「こんなにもちがうものか」とびっくりしました。
よい出会いを
楽器屋さんを紹介してくれた同僚がこんなことを言ってくれました。
チェロは決して安いものではありません。こうして新しく楽器を購入するというのも、
何度もできることではないと思います。
結婚する相手を決める、と言ったら大げさですが
これから一緒に音楽していく大切なパートナーを選ぶという意味では重大な決断だと思います。
今回私は、島村楽器さんを通して、とても素敵なパートナーに出会うことができたと
思っています。購入してから1年になりますが、Bjornから奏でられる音に魅了される日々です。
同時に、「もっともっといい音を引き出したい」、「うまくなりたい」と思います。
楽器の購入をお考えの方は、島村楽器さんのようなプロの楽器屋さんに相談されることを
おすすめします。
予算、どんな曲を弾きたいか、どんな音が好みか、どんなふうに音楽を楽しみたいのかなど、
それぞれの状況に合わせて、素敵な出会いをサポートしてくれると思います。
要望をしっかり伝えることがとても大切ですよ!
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